第79回九州・沖縄生殖医学会の開催にあたって
このたび、第79回九州・沖縄生殖医学会を令和5年4月9日(日)に、福岡市の福岡国際会議場で開催させていただくことになりました。長崎大学産科婦人科学教室にとって大変光栄なことであり、九州・沖縄生殖医学会の皆様には深甚なる謝意を表します。
この一年間、不妊治療への保険診療の導入、着床前遺伝学的検査における新たな見解/細則が承認されるなど、社会情勢の変化とともに生殖医療の分野においても大きな動きがございました。不妊症に悩むカップルへ最善の医療を届けるには、生殖医療従事者が、生殖医療の現状と課題についてよく理解し、つねに、その対策を考えていくことが大切です。また、精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療については、社会全体で議論すべき課題です。一方、2022年の国内の出生数は速報値で79万9728人だったと発表されました。80万人割れは2033年と推定されていたことから、日本における少子化は、想定よりも急速に進んでいることがわかります。生殖に関わる様々な課題に対して、私たち生殖医療の専門家が果たすべき役割は益々大きくなっていると感じております。
今回の学術講演会では、ランチョンセミナーの講師として、慶應義塾大学名誉教授の吉村𣳾典先生をお迎えしております。会員の皆様には、倫理的・法的・社会的課題(Ethical, Legal and Social Issues: ELSI)の観点からも、日本における生殖医療の現状と今後の展望について理解を深める機会にしていただきたいと考えております。また、モーニングセミナーの講師にはフェニックスアートクリニック院長の藤原敏博先生をお迎えしております。藤原先生と私はGnRHパルス療法などで著名なMassachusetts General HospitalのWilliam Crowley先生の門下生であり、本学術講演会では生殖医療における最近の話題について紹介していただく予定です。
開催形式は、現地とWeb配信とのハイブリッド開催で準備しております。新型コロナウイルスは、しばらくなくなることはありません。しかしながら、何もわからなかった3年前とは異なり、新型コロナウイルスに対するワクチンが開発され、学術講演会の安全な開催に必要とされる感染対策も把握されてきました。これまで対面での発表の機会が限られていた皆様には、活発な議論の場を提供したいと考えております。
末尾になりますが、本会の開催にあたり日本生殖医学会九州ブロック会長の河野康志先生、あすか製薬株式会社ならびにフェリング・ファーマ株式会社の皆様に多大なるご協力とご尽力を賜りましたこと、この場にて厚く御礼申し上げます。今回も多くの会員から演題が集まり、43演題の発表が予定されております。春の福岡で、学問はもちろん観光なども楽しんでいただけると幸甚です。万全な感染対策のもと、多くの皆様のご参加をお待ち申し上げます。